ジンジャエールを飲みながら

大都会の片隅で働くしがないウェブ屋が、ウェブと全然関係のない読書とかアニメとかの感想を書き連ねるメモブログです。

読書:『女性の視点で見直す人材育成』

 

 女性の働き方に焦点をあてつつ、職場のマイノリティ全般(育児・介護・障害・健康上の問題などを抱えた、フルタイムで働く男性以外のすべての人)が働きやすい職場を作る…というテーマで、さまざまなデータを分析した本。

本書に掲載されたデータを、職場のさまざまな立場の人同士で話しあうための「共通の土台」にするために書かれている。

 

帯に「職場の科学」と銘打っているが、そのとおり、精神論ではないのがいい。

あと、2色刷りで読みやすい。

グラフがたくさんあるけれど、見やすい。

 

冒頭で、優れたロールモデルがいないから女性は働き続けることが難しい、というロールモデル論の限界が指摘される。

ロールモデルとして完璧に家事と育児と仕事を両立するスーパーウーマンを示されたところで、「ああはなれない」となってしまう。…という感覚は、非常に分かる。個人の努力だけで勝ち上がってきたスーパーウーマンのことは尊敬するけれど、誰もがスーパーウーマンになれるわけではない。

この本は、スーパーウーマンになれない普通の女性が働き続けるための職場づくりについて、科学的に議論するための本である。

 

スタッフ期、リーダー期、マネージャー期、ワーママ期の4つの立場について、課題や成果を上げるためのヒントについて、データを分析している。

ちなみにリーダー期というのは、指示を出すが評価はしない立場。日本企業にはよくある立場だが海外には少ないので、先行研究が少ないらしい。

 

ワーママが仕事のためにやっていることと、成果があがっているかどうかの相関関係のデータが興味深かった。

睡眠時間を削って仕事をした場合、成果は上がらないどころかむしろ下がる(負の相関関係があった)。

逆に成果が上がるのは、
・メンバーの状況や得意な仕事を把握し、適切な人に仕事を頼んでいる

マネージャー目線で言うなら
・仕事を頼んだときに、職場メンバーは快く引き受けている

つまり、お互いに手助けをできる職場であることが必要。

 

また、成果をあげるためのマネジメント行動としては
・責任ある仕事を任せている
・評価結果を適切に通知し、話し合いの機会を持っている
・将来的な昇進・キャリアの伸長の手助けをしている

などが正の相関関係。

つまり「ワーママには簡単な仕事だけ任せる」は間違い。

ただし、キャリアの伸長の手助けは、マネージャーがやってるつもりでもワーママ本人が手助けを受けていると感じていないこともある。「やってるつもり」にならないよう、注意が必要(他の項目も、マネージャーとワーママの回答で有意差があった)

 

「職場メンバーの競争意識を煽っている」とマイナスで、「チームとしての目標がある」とプラスになる。そりゃそうだよな、という感じ。競争だったら、フルタイム長時間残業の男性に、ワーママは勝てっこない。

 

そんなふうに感覚として「当たり前のこと」だと思っている部分を、きっちりデータ化して見える化してくれる本。

そして私だったら「当たり前のこと」だと思っている部分も、あんまり女性の働き方について考えたことのない人だったら当たり前だと思わないかもしれない。こういう本が「マネージャー・人事担当者・経営幹部 必携」という帯がついて、広く読まれるのはいいことだと思う。