ジンジャエールを飲みながら

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読書:ひかわ玲子『アーサー王宮廷物語』3部作

キャメロットの鷹―アーサー王宮廷物語〈1〉

キャメロットの鷹―アーサー王宮廷物語〈1〉

 

 

2006年に書かれたアーサー王伝説。「いかアサ」で紹介されていたので手に取った。

 

この作品、モードレッドの扱いがかなりよい。

サトクリフ・オリジナル版でもモードレッド(モルドレッド)はとても「魅力的な悪役」だったけれど、ひかわ玲子版のモードレッド王子は「悪役」ですらない。

聡明で理知的な王子様で、アーサー王との関係も良好。周囲からも概ね世子と認められている。主人公とは出会い頭の印象こそ最悪だったけれど、やがて相思相愛になっていくので、少女漫画的お約束という感じがする。

完全に正統派の王子様、まさしくモードレッド王子…!

(※余談だが、1巻のキャラクター紹介ではまだ騎士に叙任されていないので「モードレッド王子」の表記で出てくる。)

 

と、モードレッドの話から始めてしまったけれど、ちゃんと作品についても書いておく。

 

主人公はオリジナルキャラクター、メイウェル。妖精ニニアン(マーリンの伴侶)の年の離れた妹。双子の兄フリンとともにアーサー王の宮廷に伺候し、メイウェルはギネヴィア妃の小間使い、兄はアーサー王の小姓。

多少の魔法が使えて、主人公はミソサザイに、兄は鷹に変身できる。アヴァロンに引きこもってしまったマーリンの代わりに色々なものごとを見て報告するのも務め。

シャロットのエレイン姫とは幼い頃からの親友。サー・ユウェインに憧れ、ほのかな恋心を抱く少女。

そんな感じの設定。

 

メイウェルは、最初はサー・ユウェインに憧れているけれど、どんどんモードレッド王子に心惹かれていく。彼を知るほどに、その正義感や孤独や優しさを知って、サー・ユウェインへの「憧れ」とは違う「愛」を知る…そんな感じ。

 

女性視点から見たアーサー王伝説とのことで、親友のエレイン姫はもちろん、モーゲン・ル・フェ、イグレイン王妃、パーシヴァルの母など、女性たちの心情を思いやるシーンが多いのが印象的。

イグレイン王妃と三姉妹に同情し、マーリンやユーサーに対して疑問を覚えながらも、モーゲンのやり方には反発する立場。モーゲンと相対するシーンはとても熱い。

 

さらにメイウェルは、ギネヴィアの侍女ではあるけれど、ランスロット&ギネヴィアよりも完全にモードレッド寄りの立場。エレインのこともあってランスロットのことは許せない。(でもランスロットがギネヴィアをどうしようもなく愛していることも知っているので、葛藤もある)。

しかしそのうえでランスロットがモードレッドを殺しかけるものだから…話としては、わりとランスロットが悪役な気がする。

 

そして、この正統派王子様なモードレッドがアーサー王に叛旗を翻さざるを得なくなる事情は、アーサー王の円卓であってもやはり宮廷政治的なあれこれからは逃れられなかったということだ。  

 

キャメロットの鷹―アーサー王宮廷物語〈1〉

キャメロットの鷹―アーサー王宮廷物語〈1〉

 
聖杯の王―アーサー王宮廷物語〈2〉

聖杯の王―アーサー王宮廷物語〈2〉

 
最後の戦い―アーサー王宮廷物語〈3〉

最後の戦い―アーサー王宮廷物語〈3〉

 

 

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