読書:『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』
序論が「安室奈美恵さん引退の日にTwitterのトレンド1位がマーリンだった」話から始まっててめっちゃ笑った(分厚いから読むの大変そうだけど、このノリならいけるかも)
— 荻野 (@OginoYou) 2019年3月16日
通称『いかアサ』。すごい本だった。
表紙が3種類!
帯が箔押し!!
全ページ2色刷り!!!
表紙はアーサー王、ランスロット、ガウェインの3種類から選べる(中身は同じ)。
私はランスロット版を購入。見比べたときに一番好きな絵だったのと、fgoでもランスロットはお世話になっているから…
(弊カルデアにアーサーはいなくて、ガウェインとランスロットは両方いるのだけど、全体宝具をぶちかます役割だとモードレッドLv100が最強すぎるのでガウェインの出番は減ってしまうのだ…ランスロットは役割が違うから出番が多い)
本文は2色刷りのカリグラフィーが美しい。
開いた瞬間「うおぉ〜〜中世っぽい〜〜〜」って唸ってしまった。
とても分厚い本なので、まだ全部読めていないのだけど、感想は特に面白かったところだけ。
序論
中世の終焉と共にアーサー王伝説はいったん下火になり、18世紀後半~19世紀のロマン主義の中で再び脚光を浴びたらしい。
個人的に19世紀のアーサー王伝説と言えば、『アーサー王宮廷のヤンキー』だと思っている。(19世紀の北部アメリカ人(ヤンキー)が中世のアーサー王宮廷にタイムスリップして俺TUEEEEをキメる、元祖異世界転生なろう小説的な話らしい。まだ読めてないので伝聞系)
その19世紀の人気から、現代の人気が地続きに繋がっているのなら、そりゃサブカルと相性いいよなぁ…と思ったり。
第一部・需要の黎明期
明治・大正時代、「騎士」というイメージさえ持っていなかった日本人がどのように騎士を受け入れていったのか…の話。古い本の挿絵とか、夏目漱石とか。
「アストラット」から「アスコラット」へ
前半の学問的なあたりは私には難しすぎた。
4章でひかわ玲子『アーサー王宮廷物語』に触れているのだけれど、そこは面白かった。『アーサー王宮廷物語』は今度読む。
19世紀~第一次世界大戦の頃にはガラハッドが英雄視されたけれど、20世紀になるとマーリン、モードレッドが脚光を浴びたらしい。
(『いかアサ』ではサトクリフは扱われていなかったのだけれど、サトクリフもモードレッド最推し!って感じの人だから、そういう20世紀の潮流の中にいるのだと思う)
モードレッドが20世紀になって脚光を浴びたの、家父長制の時代の終焉って感じするよなーって思ったり。
第二部・サブカルチャーへの浸透
とはいえ日本のサブカル界隈でのアーサー王伝説は、メインで扱われることは多くなかった。
(私もFateに触れるまでアーサー王伝説については「エクスカリバー」と、数人の騎士の名前しか知らなかった。SoundHorizon「聖戦と死神」に出てくる騎士が円卓と同じ名前だなーと思ったり、コードギアスでロボットの名前が円卓だなーと思ったりする程度)
宝塚のアーサー王物語
バウ・ミュージカル『ランスロット』についての解説。
(このミュージカル、実は私も見ているのだけれど、すごく難しかった印象。初めてアーサー王物語にちゃんと触れたからキャラの理解も曖昧だし、当時はまだミュージカル慣れしていなかったし…という言い訳。)
解説を読んで、そりゃ難しいわーと思う反面、ちゃんと見返してみたくもなったり。
女性アーサー王受容之試論
これが読みたくて買ったようなところあるw
けど、これだけを目的にするなら少し物足りないかも。面白いけど、他の論に比べて短い...。
アルトリア(本論内では「アーサー王」表記)が、戦う少女の系譜としてどこにあるのか…みたいな話。
『リボンの騎士』のサファイア、『ベルばら』のオスカルと同じ、男装の女性の系譜であって、プリキュアやセーラームーンのような少女の姿のままで戦うのとは別の系譜だよね、という話だった。
サファイアやオスカルとの差も分析されていた。
アーサー王物語とドラクエ9の騎士道がどう違うのか…みたいな話。宗教性の排除、婦人崇拝の廃止、民への献身、誓約の扱いの変化。そして「アタシの騎士道」。
男の娘騎士「シルビア」が気になった。この論では、ジェンダー的な視点の話はあまりしていないけれど、そういう面での分析もありそうなキャラクターだな…と。
ドラクエ9内で語られる「新しい騎士道」が、未来への讃歌のように思われて、ドラクエ9をやってみたくなった。
第三部・君臨とさらなる拡大
未読。読んだら追記します。
対談『金色のマビノギオン』
対談から興味をもって、漫画を読んだ。(これも近いうちに感想を書く。)
『金マビ』のキャラクタの初期設定も公開されていて、その初期設定からの変化を見ると、すごく考えて作りこまれていることがよくわかる。
(あと対談のアイコンイラストの小宮先生が、座談会の小宮先生だった…)
コラム「沈め!アーサー王物語の沼」
最高。爆笑。
「原典が最大手」の注釈、本当に意味を知らない人が注釈を読んでも理解できないんじゃないだろうかwwwって感じだった。とりあえず最高。
巻末資料
アンケートとか、執筆者の推し騎士紹介とか、用語集とか年表とか、完全にテンションが同人アンソロのそれ。おもしろかった。
いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか〈アーサー版〉: 変容する中世騎士道物語
- 作者: 岡本広毅,小宮真樹子
- 出版社/メーカー: みずき書林
- 発売日: 2019/03/10
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いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか〈ランスロット版〉: 変容する中世騎士道物語
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いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか〈ガウェイン版〉: 変容する中世騎士道物語
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